「アービトラージ（裁定取引）」は市場の歪みを利用してローリスクで利益を狙う手法の1つで、投資家やプロのトレーダーも利用しています。
その中でも、私たち一般人にも関係のある「実需系アービトラージ」という考え方が存在します。
たとえば、海外旅行の際の外貨両替。実はここにもアービトラージ的な視点を取り入れることで、為替差によるちょっとした“得”を生み出すことが可能です。
そこで本記事では、「実需系アービトラージ」で利益を狙う方法について解説します。
為替を利用して利益を狙う手法になるので、興味のある方はぜひご覧ください。
実需系アービトラージとは何か？
アービトラージとは、価格差を利用してリスクなく利益を得る手法のことです。
金融の世界では、異なる市場での同一商品の価格差を使って売買を行い、利ざやを得ることを目的としています。
「実需系」とは、実際にモノやサービスを必要とする場面（実需）において、価格差を利用するものです。
つまり、「転売目的」ではなく、「自分の生活に必要な行為の中で得をする」という意味で使われます。
実需アービトラージの例として挙げられるのが、以下のようなケースが挙げられます。
・海外通販での価格差購入
・国際送金における為替差益の調整
本記事では特に、「海外旅行における両替」に焦点を当てて解説します。
海外旅行とアービトラージ【両替で差が出る理由】
海外旅行時に必ず必要になるのが「両替」です。日本円を現地通貨に替えるとき、実は為替レートによって“得するか損するか”が決まるのです。
旅行者Aは、出発前に日本の空港で米ドルに両替（1ドル＝155円のレート）
旅行者Bは、現地の街中で両替（1ドル＝150円のレート）
1,000ドル両替した場合、支払う日本円は以下の通り。
A：1,000ドル × 155円 ＝ 155,000円
B：1,000ドル × 150円 ＝ 150,000円
同じ金額のドルを得るのに、Aは5,000円多く支払っていることになります。これは立派な「実需系アービトラージの損失」です。
つまり、どこで・いつ・どの方法で両替するかによって、同じ旅行でも出費が大きく異なるのです。
両替レートの差はどこで生じるのか？
両替レートには以下のような差が生じやすいポイントがあります。
① 空港 vs 市中の両替所
空港は便利ですが、レートが非常に不利なことが多いです。一方、現地の銀行や市街地の両替所は、競争原理が働いているため、比較的良心的なレートになる傾向があります。
② 銀行 vs クレジットカード
クレジットカードの海外キャッシングを使えば、インターバンクレート（実勢レート）に近い水準で両替が可能です。キャッシング後すぐ返済すれば、利息もほとんどかかりません。
③ 時間帯・曜日
為替相場は平日24時間動いており、急激な為替変動があると、両替レートにも影響します。週末などはレートが固定され、手数料が高くなる場合もあるため注意が必要です。
以下に、実需系アービトラージで利益を得た実践例について紹介します。
海外旅行を年に数回するような人は、渡航前に為替レートの動きをチェックし、レートが良いタイミングで事前にキャッシング枠を使って外貨を入手しました。
また、現地でのカード利用も積極的に行い、現金両替の比率を下げて両替手数料を抑えています。
長期間現地通貨が必要な人が、海外送金サービス（WiseやRevolutなど）を使って安い為替コストで資金を移動しました。
この方法であれば、1ドルあたり数円の差でも、数千ドル単位で考えれば大きな差になります。
実需アービトラージの注意点とリスク
以下に、実需アービトラージを実行する際の注意点やリスクについて解説します。
為替変動リスク
たとえば、「もっと円高になってから替えよう」と待ち続けていたら、逆に円安が進み損してしまうことも。為替は誰にも正確に読めないため、待ちすぎは逆効果になる可能性があります。
手数料の落とし穴
「0円両替」などを謳っている両替所でも、実際にはレートに手数料が上乗せされています。
単純に表示されたレートを鵜呑みにせず、実効レート（トータルでいくらかかるか）で判断することが大切です。
キャッシングの返済遅れ
クレジットカードでの海外キャッシングは有効な手段ですが、返済が遅れると利息が膨らみます。繰上返済ができるアプリを使うなどして管理を徹底しましょう。
実需アービトラージを助ける便利ツール
●Wise（旧TransferWise）
為替手数料が非常に低く、海外送金や現地通貨引き出しに便利。
●Revolut
為替レートがリアルタイムで確認でき、アプリ内で両替が可能。
●マネーパートナーズ外貨両替アプリ
事前に両替して空港で受け取り。手数料が比較的安く、レートも良好。
●Google 為替レート検索
「1ドル 何円」などで調べて、現地両替所のレートと比較検討が可能。
【まとめ】海外旅行でも実需アービトラージの意識を
「アービトラージ」と聞くと難しそうな響きがありますが、私たちの生活の中にも多くの“為替差のチャンス”が潜んでいます。
特に海外旅行における両替は、「どこで・どのタイミングで・どんな手段で」行うかで出費が変わります。
わずか数円の差でも、両替の金額が大きくなればそれは“損”にも“得”にもなり得るということです。
旅を賢く楽しむために、「実需系アービトラージ」の視点をぜひ取り入れてみてください。
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