為替市場には、一瞬のレートのズレを利用して利益を得る「アービトラージ(裁定取引)」という戦略があります。
アービトラージは多くの投資家が取り入れているオーソドックスな取引方法の1つですが、その中に複数通貨を用いてリスクを抑えつつ収益を狙う「三角アービトラージ」という手法があります。
通常のアービトラージよりも複雑に感じるかもしれませんが、仕組みを理解すれば、初心者でも理論的な動きはつかめるようになります。
本記事では、三角アービトラージの基礎から実際のやり方、注意点について解説していきます。
為替アービトラージで安定的に儲けたい方はぜひご覧ください。
三角アービトラージとは何か?
三角アービトラージ(Triangular Arbitrage)とは、3つの異なる通貨間の為替レートのわずかなズレを利用し、同時に取引を行うことで利益を得る方法です。
名前の通り、3つの通貨を「三角形」に組み合わせて取引を完了させるのが特徴です。
通常、為替レートは理論的に連動していますが、為替市場の価格は需要と供給により常に変動しています。その結果、短時間だけレートにズレが生じることがあり、それを突くのがこの戦略です。
・米ドル(USD)
・ユーロ(EUR)
・日本円(JPY)
上記の3通貨を使って、1周の取引を通じて元の通貨より多く戻ってくるなら、それがアービトラージ利益です。
三角アービトラージの具体的な仕組みと例
では、具体的にどのように取引するのかを、簡単な例で見てみましょう。
USD/JPY = 110.00
EUR/USD = 1.20
EUR/JPY = 132.50
この3つのレートを見て、「レートにズレがある」と感じたら、それがアービトラージのチャンスです。
①日本円→米ドルに両替(USD/JPY)
⇒100万円 ÷ 110 = 約9,090.90ドル
②米ドル→ユーロに両替(EUR/USD)
⇒9,090.90 ÷ 1.20 = 約7,575.76ユーロ
③ユーロ→日本円に両替(EUR/JPY)
⇒7,575.76 × 132.50 = 約1,003,780円
元は100万円だったのが、約1万3千円の利益になっています。これが三角アービトラージの理論上の利益です。
初心者でも理解しやすい三角アービトラージ実践の流れ
実際の取引は高度なシステムや高速な注文が必要になるため、個人投資家が実行するのは難しいですが、その考え方は為替の理解や投資の基礎力アップに役立ちます。
初心者向けに簡略化したやり方の手順は以下の通りです。
ステップ1:3通貨ペアのレートをリアルタイムで比較
FXのチャートやツールを使って、以下を同時にチェックします。
通貨B/C
通貨A/C(またはC/A)
ステップ2:理論レートと実勢レートを比較
3通貨のうち、2つの通貨ペアの掛け算 or 割り算で理論レートを出し、もう一方と比較。
(例:USD/JPY × EUR/USD と EUR/JPY を比較)
このとき、差分が生じていればアービトラージのチャンスです。
ステップ3:3つの通貨間で順番に取引
実際に通貨A→通貨B→通貨C→通貨Aの順に取引を行い、最終的に通貨Aが増えていれば成功です。
※実際のFX取引では「約定レート」「スプレッド」「手数料」などの影響を強く受けるため、理論上の利益がそのまま得られるわけではありません。
利益を得るにはスピードが命
三角アービトラージの特徴として、「チャンスが一瞬で終わる」ことが挙げられます。
市場の参加者は常にレートのズレを監視しており、ズレた瞬間に大口の注文が入って差分はすぐ解消されます。
そのため、多くの場合は自動売買システム(アルゴリズム取引)を利用して行われています。
個人でリアルタイムのスプレッドとレートを見ながら、手動で利益を得るのは非常に難しいのが実情です。
三角アービトラージを学ぶメリット
たとえ実践が難しくても、三角アービトラージの仕組みを理解することには以下のような利点があります。
☑FXの理論的背景(裁定理論)に強くなる
☑スプレッドやコストの重要性を実感できる
☑他のアービトラージ戦略(実需アービトラージなど)への応用力がつく
つまり、知識として持っておくことで、他の投資判断にも役立つ視点が養えるのです。
三角アービトラージの注意点とリスク
三角アービトラージには以下のようなリスク・注意点があります。
・レートのズレは非常に小さい
・高頻度・高速な注文処理が求められる
・為替市場の急変で逆に損失になる可能性も
こうした理由から、実際の利益は“理論通り”には得られないと考えておくべきです。個人で挑戦する場合は、デモ環境やシミュレーターで試してみるのが安全です。
【まとめ】理論を理解し、相場感覚を養おう
三角アービトラージは、通貨間のレート差に着目した高度な取引戦略です。
初心者がいきなり実践するのは難しいかもしれませんが、その仕組みや考え方を学ぶことで為替相場の見方が大きく変わるでしょう。
「なぜドル円とユーロドルが動いているのに、ユーロ円は逆に動くのか?」といった連動性や理論価格に対する感覚が身につけば、為替だけでなく株やコモディティ投資にも応用できます。
興味を持った方は、まずは為替レートの関係性を眺めてみることから始めてみてください。
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